チェックメイト ー ある日のナンパ師の3600秒|賛否両論ナンパ小説

 

 

「まさかこんな事になるとは思わなかった。」

 

性行為を終え、全裸でベッドで横になりながら彼女は嬉しそうにつぶやいた。

 

…たしかに。

 

僕も、まさか今日、こんな事になるとは思わなかった。

少なくとも、予想外の残業で疲れ切った体で最寄り駅に着いた時には、まさか今日、このような形で射精をする事になるとは思わなかった。

 

 

ーーーーーー

春の陽気に包まれていた昼とは裏腹に、夜は少し冷える日だった。

 

スーパーの鮮魚コーナーで売られている死んだ魚のような眼をした、くたくたに疲れ切ったサラリーマンに囲まれながら山手線を外回る。

ふと窓越しに写った僕の目を見ると、同じように死んだ目をしていた。実際、死ぬほど疲れていた

 

そんなくだらない事を考えていると、最寄り駅に着いた。

時計を見ると23時を回っていた。

 

早く仕事が片付けばナンパでもしようと思っていたが、この疲労感では無理だ。これが社会人の宿命なのか。

 

悔しい想いすら溢れないくらい、僕は疲れ切っていた。

 

今から帰って、24時くらいに寝て、明日は9時からミーティングだから、8時に家を出て、、、、だとすると7時起きだから、6時….いや7時間寝れる?あれ?

疲れ切って頭で計算するが、うまく思考が働かない。もういい、寝たい。

 

とりあえず睡眠時間は確保できそうなので、ほっと一息つく。晩飯は適当にインスタント食品とビタミン剤でも胃に入れよう。

人間としての機能を最低限保つ、最低の晩餐に心躍らせながら、駅の階段を改札に向けて歩く。

この時期はまだ電車に慣れていない新入生や新入社員が多く、全体的に歩くスピードが遅い気がする。例外なく、疲れ切った中年世代の僕も、その遅い流れに身を任せる。

 

すると

 

ふと目の前を見ると、ピンクのスカートに白シャツという、いかにも「女子大生」という女の子が歩いていた。

 

この時間に帰宅中。電車を乗り換えて帰る途中だろうか。

そんな事を考えていると、彼女が歩きながらカバンからスマホを取り出そうとした。

 

運命の悪戯なのか。
神様からの恵みなのか。

それとも、悪魔の手ほどきか。

 

カバンから定期入れが落ちる。そのまま階段を4,5段、滑り落ちた。

そして、その定期入れは僕の目の前にあった。

 

女の子も定期入れを落としたことを認識していたようで、振り返る。

今まで長い間生きてきて、こんなタイミングで女性の落とし物を拾う事は数えるほどしか無かったなぁ。

 

そんな事を考えながら、丁度つま先の目の前に落ちてきたブランド物の定期入れを指先で拾い上げ、差し出す。

 

あの、落としましたよ

あ、ありがとうございます。

 

相手の顔を確認する。

絶世の美女とまでは言わないが、愛嬌のある可愛らしい表情
やや肉付きの良いボディライン。大きい胸の膨らみ。
少し赤い頬、やや充血した目

 

…飲み会終わりか。

 

「お姉さん、今日は飲み会終わりですか?」

 

考えるよりも先に、口から言葉が吐き出される。

死んだ魚のような眼が。

就寝に向けて眠りかけていた身体中の細胞が。

一斉に戦闘モードに改造されていく。

 

「え?あ、はい。」

大学の飲み会が楽しかったから、つい飲み過ぎました。そんな顔してますね。

 

何度も何度も口にした切り返し。

ナンパ師としての思考回路が、無意識に会話を進める。

不意を突かれたのか、彼女が驚きと照れの入った表情で回答する。

 

「え、分かります?笑」

 

階段の途中で話し込むわけにはいかないので、一緒に階段を上がる。

 

「わかるよ。お姉さんからほのかに香るテキーラの匂いが、全てを物語ってる。」

「テキーラは飲んでないです笑」

「そう?でもお姉さん、テキーラ飲みたいって目をしてるよ?」

 

否定しながらも、彼女から嫌そうなそぶりは無い。

飲み会帰りという事もあり、良い感じに警戒心が解けている。

 

軽く話すと、どうやら彼女は今日はサークルの飲み会だったようだ。

そして階段を上がりきる。

 

さて、この時点で相手に投げた質問は2つ。これ以上質問攻めにすると会話を失速させる。

先程の就寝モードが嘘のように、ナンパ師として100%の状態で会話をしている実感が沸く。

悪くは無い。

 

でもちょっと聞いてほしいんだけど

階段を上がりきって、人通りのすくない位置で相手をビタ止めする。

 

今日本当は19時に上がって仲の良い同期で飲むはずだったんだけど、全然関係ない部署のトラブル対応で急遽残業する事になってさ。

 

話ながら、冷静にストーリーを組み立てる。

 

「ようやくさっき仕事が終わって友達に電話したら、ちょうど解散したみたいで。今日は朝から”お酒飲むぞ!”って気持ちで居たのに、残念だなーって時にちょうど、酔っぱらって定期を落としちゃう、テキーラが飲みたい目をしてる女の子が居て。」

即興で考えた内容にしては上出来だろう。いや、前もどこかで使ったか。

 

可哀想な人助けだと思って、一杯だけ付き合ってよ。

 

打診すると同時に、断られた時のリカバリ案を思考する。

「えー、今からですか?」

そうそう、一杯だけ。俺も明日朝から仕事だから、そこまで遅くまで飲むつもりはないよ。

ここは僕の庭だ。

 

この駅に乗り入れる電車の終電時刻は把握している。彼女の定期入れに記載してあった駅名を思い出す。その駅であれば、24時くらい。あと1時間か。

 

「じゃあ、30分だけ飲まない?」

「えーどうしよ…」

「一杯だけでいいから。この辺住んでるから良い店しってるし、奢るので。大丈夫だよ、終電までには帰ってこれるから。」

 

いつも通りの決まりきった打診。さり気ない会話の中に「30分・1杯だけ・奢るから」の3つを添えて、極限まで連れ出しのハードルを下げる。

あえて戦略的に奢り、相手に貸しを作り、最後の打診(=家に連れ込む)が通る可能性が1%でも上がるように仕向けている事を彼女は知っているのだろうか。

まるで蟻地獄のように、幾重にも伏線を巡らせる。

 

んー・・・じゃあ一杯だけ!

 

その張られた伏線に気が付ないまま、彼女が要求を受け入れる。

 

お、嬉しい。ありがとうね!

 

顔の皮膚で喜んだ表情を作り、改札の外に出る。

 

今日の晩飯の事や、明日の仕事に思考を使う野暮な真似はしない。考えるべきは、この目の前の女をどう討つか。それだけだ。

 

この女はどんな下着をはいているのか」「この女はどんな声で喘ぐのか

突然の誘いに照れながらも期待を膨らませる少女のような笑顔が、淫らな快楽に溺れた時に見せる時の表情に期待を馳せ、僕たちは眠らない街に降り立った。

 

 

さて、今日のゲームはどうやって楽しもうか。

 

ーーーーーー

そうなんだ。美術系の学校に通っているんだね。

 

いつもの店。いつも頼むウィスキー。

好物の「I.W.ハーパー」をソーダで割った液体を喉に流し込みながら、彼女の話を聞く。

 

酒を注文する時、迷いなくI.W.ハーパー・ウィスキーを頼む僕を見ながら、彼女は「大人ですね!」と目を輝かせながら言った。別にたいした酒でも無いのに。これだから若い女は楽だ。

 

女の決断には時間がかかるので、理由を付けてその後押しをする。

メニューの無いバーで提供されるカクテルを理解出来ないであろう彼女に、オススメだからという適当な理由を添えてフルーツが入ったアルコールを薦めると、あっさりと「それで!」とOKしてくれた。

 

この女は30分で充分だ

 

そう直感する。

先ずは警戒心を解く為、お互いの社会的所属の話から始める。

 

こちらの仕事を軽く話す。何度も何度も、飽きるほど他の女に話した内容を、まるで今日初めて話すかのような表情で話す。

彼女は小動物のようなキラキラとした眼で、喜怒哀楽を表現しながら嬉しそうに聞く。

話し終えてから「ちなみに、そっちは?」といつもの切り口で、相手から情報を引き出す。

 

先程歩いている最中に聞いた彼女の名前などは既に忘れている。300人以上抱いたのに、思い出せる名前はせいぜい30人くらいだ。そういえば僕の名前を告げていなかった。まあ、その方が都合がいい。

彼女は美術の専門学校に通っている学生だった。

 

先程の定期に書いてあった駅名を再度、思い出す。あの辺りの学校か。

「もしかして、、、その学校って〇〇の辺りにある学校?

「え、そうです!すごい、何で分かったんですか?」

「昔知り合いがそのあたりの美術学校に通っていたって気がしてさ。何て名前の学校だっけか…」

「〇〇です!物知りなんですねー。」

 

これがコールドリーディングと呼ばれる技術である事を彼女が理解するのは、いつになるのだろうか。

いや、理解する事は無いのかもしれない。

 

正直美術の専門学校に対する興味も知識も無い。

彼女が言ったその学校も当たり前に知らないが「ああ、そんな名前だった気がする」と適当に相槌を打つ。

 

自分の通っている学校が有名だった事を嬉しく思ったのか、彼女が嬉しそうな眼をする。意識出来ないレベルで、信頼を取りに行く。

 

体内時計が15分の経過を告げる。話題を恋愛にシフトする。

 

彼女は最近失恋したようだ。同い年の彼氏に、理由はよくわからないがフラれてしまった。

名前も顔も知らないその彼氏に心からの感謝の意を送りつつ、口からはその彼氏を軽く非難する言葉を送る。

美術学校という事でそこまで出会いの機会もそこまで多くはないだろう。

同世代が恋愛している姿を見て、聞いて、彼女は羨ましさと悲しさが入り混じった複雑な心境であろうと勝手に推測する。

 

その推測に沿って、彼女の恋愛観を肯定しつつ話を進める。

お酒が回っているのか、彼女は饒舌に、何の面白味も無い普遍的な恋愛観を語る。僕はその話を聞きながら、彼女を肯定してあげる。ただそれだけ。

 

そして、最後に一つだけアドバイスをしてあげる。

 

遊ぶなら、若いうちの方が良い

 

そう告げると、彼女は「そうですよね!!周りを見ててもそう思います!!」と頷いていた。

 

体内時計が30分の経過を告げる。一瞬だけ時計に目を落とす。34分が経過していた。

「お会計を貰おうか。」

早すぎる解散に彼女が若干驚いた眼をしつつも「あ、そろそろ行かないとですね」と口にする。

 

あと少し。もう一歩。

 

お手洗い行かなくて大丈夫?」そう告げると、少しだけ悩んで彼女は「行ってきます」と返答し、暗いバーの奥に消えてゆく。

 

その隙に伝票を出すように店員に依頼をする。そして冷静に状況を振り返る。

・帰ろうと思えば終電でギリギリ帰れなくもない。
・コールドリーディングがかなり効いている。相手は僕を信用し切っている。
・直近の失恋のお陰で、上の世代の男性と交流したいという想いはある。
・若いうちに遊んでおきたいという想いもあるが、ワンナイトの経験は無し。

やれる事はやった。

 

分析をし終えると、店員が伝票を持ってくる。素早く出された伝票にクレジットカードを挟み、再び店員に渡す。

 

お手洗いから彼女が戻ってくる。先程よりも唇の血色がよくなり、頬が綺麗になり、髪は整い、どことなく香水の香りがする。

 

なるほど

これから解散だと言ったはずなのに。今から別の場所に移動すると言わんばかりの準備をしてくれたらしい。

 

彼女の眼は、ここから始まるかもしれないワン・ナイトに期待と興味を膨らませているかのような。夢見る少女のように見えた。

 

おめでとう。君の望みはもうすぐ叶う。

そう思いながら、心が昂るのを抑える。

 

 

ーーー

じゃあ、行こうか

ご馳走様でした。

テーブルチャージだけで恐らく学食であれば2回分ほど食べられるような会計を見ながら、彼女は感嘆の表情をしていた。

しかし、素人の女子大生との性行為を金額に換算したらこれよりも遥かに高い値が付くだろう。彼女はどうやら、自分の価値を正確に把握できていないらしい。

 

店から出る。重厚な木製の扉を押し開け店を出る。

外の寒い空気が肌に当たる。

何の前触れも無く、彼女の手を優しく握る。

すこし緊張した目で彼女がこちらに視線を送ったのが分かったが、それを気にせずにゆっくりと手を引く。

駅とは、反対の方向に。

 

「ちょっと歩こうか。」

 

そう良い、彼女の目をしっかりと見る。笑顔を崩さずに、そのまま手を引く。

少しだけ困惑と照れの入り混じった表情で、彼女は「慣れてますね」とだけ言った。

 

長い間生きているからね。その分経験も多いんじゃない?

 

肯定でも否定でもない。何の意味もなさない回答を投げながら、アスファルトをゆったりと踏む。先程まで握っていた手は、いつの間にか彼女の腰に回っていた。

 

…あと少しだ。

期待に躍る獰猛な笑みを心の中に隠しながら、人気の少ない通りに入る。

いつもの場所

いつものタイミング

スクリーニングの意味も兼ねて、彼女を軽く抱き寄せる。拒否は無い。

そのままの流れで、ゆっくりとキスをする。

 

最初はこわばっていた彼女の身体も、徐々に緊張が解ける。彼女の腕が僕の頭に回り、彼女が舌を少し絡ませたタイミングで敢えて唇を話す。

そして彼女を抱き寄せた状態で、緊張を解く為におどけて、耳元で小さく告げる。

 

明日は何時に起こせばいい?

 

不意の質問、奇想天外な打診に彼女は思わず笑顔になる。

 

…8時くらいかな。

 

 

ーーーチェックメイトだ。

 

彼女と最初に言葉を交わしてから、約1時間。

3,600秒のやり取りで、彼女は僕との性行為を許可した。

 

この瞬間が何よりもの甘美だ。(もちろん、若い女との性行為も至福である事は言うまでも無い)

 

「わかった。けど俺寝起き悪いから、叩きおこしてね。」

「…本当に慣れてるんですね。」

 

そんな談笑をしながら、家に向かう。

 

 

ーーーーー

まさかこんな事になるなんて思わなかったです。初めてです、こんなの。

 

性行為を終え、全裸でベッドで横になりながら彼女は嬉しそうにつぶやいた。

 

…確かに。

 

ナンパを始める前の童貞臭が漂う9年前の僕も、まさか駅で定期を拾った相手を口説いて、そのまま家に連れ込むようになるとは思っていなかっただろう。

僕がナンパを始めていなければ、彼女の定期入れを拾い渡して終わっていただろう。いや、もしかするとその勇気も無かったかもしれない。

 

しかしどうしたものか。

僕は飲み会一回分ほどの費用で若い女子大生を口説き、そして朝まで好きに性行為ができる権利を手に入れる事が出来た。

身体中に染み付いているナンパ師としての細胞が、まるでチェス盤でゲームを楽しむかのごとくここまで導いてくれた。

 

しがない女性嫌いのオタクが、あろうことかナンパ師になるとは。

 

まさかこんな事になるなんて思わなかったな。僕もそう思う。

 

そう口にする。

ナンパは身勝手で、自分勝手な、最低の行為だ。

決して誇れる行為ではないし、倫理的にも不特定多数の女性と性行為をする事は、間違っていると指摘されるだろう。

 

しかし、それが何だ?

 

好きに女性も口説けない負け犬男や、口説かれる価値が無く放置されている女性、恋愛史上において価値の無くなった老骨からの批判など、どうでも良い。

 

彼らからの批判などは、夜の街頭に群がる蛾の羽音と同じ。何の意味も無く、それに対し感情も沸かない。

ただ僕は、学生時代に実現出来なかった「若い女性と性行為を楽しむ」という欲望に、今更になって素直に向き合っているだけだ。

 

それ以上でも、それ以下でもない。

 

ふと気が付くと、彼女は僕の腕で寝息を立てていた。

その穏やかな横顔を見ていると、なぜか居心地の良さを感じた。

 

…明日の朝は、喫茶店にでも連れて行ってあげようか。

 

そんな事を考えながら、僕も眠りについた。

ーーー

 

 

 

 

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