皆は、どのような小学生時代を送ったであろう?
私は絵に描いたような「インキャ」であった。昆虫採集が趣味であった。
ただクワガタ捕まえたぜ!楽しい!!ならよかったのだが、私の場合は、ヒラタクワガタの成虫をオス・メスと捕まえ、同じケージで飼って交尾をさせて、メスが産卵した朽木を、手作りの腐葉土ビン(菌糸ビン)に入れて成長させていた。
また成長したクワガタ同士を交配させ・・・・という繰り返しを行なっているうちに、小学校を卒業していた。
小学生の卒業文集に、「XXな人」というコーナはあっただろうか。
私の小学校にも、それはあった。
そして、その中で「昆虫に詳しそうな人」という項目があった。それをみた瞬間、私は”勝利”を確信した。
この中に、ヒラタクワガタの養殖を、菌糸ビンレベルまで行なっている人間はまずいない。
自分が注目される瞬間が、いよいよ来た。
全てが報われた気がして、本当に嬉しかった。
・・・結論から言うと、自分は「昆虫に詳しそうな人」の3位だった。
1位、2位は、陽キャでセミを捕まえて学校でミンミン言わせてたクソガキだった。
ふざけるな。
投稿中にセミを捕まえるしか出来ない無能と、ヒラタクワガタの羽化に三期成功した私が負ける、だと?ありえない。
なんなら、私の方がセミの生態にも詳しかった(標本作成もしており、セミやチョウは、養殖まではしていないのだが、5ケージ分の標本を持っていた)。
しかし、私は気がついてしまった。
これは「人気投票」なのである。私にかけていたのは、「人望」であった。
小学六年生、12歳。
人生で初めて、自分が”負け”の側にいることを痛感させられた。
さて、あれから30年の月日が流れた。
私は今、「プロナンパ師」として、ごく一部の人間から”カルト的”な人気を誇っている。しかし、家族からは絶縁され、小学生時代の友人は、当たり前のように、1人もいない。
もし私が人生をやり直せるのであれば、この「クワガタの養殖が趣味」であった、小学生の頃から、やり直す必要があるのかもしれない。
「昆虫に詳しそうな人:1位」が取れていたら、私の人生は、何か変わっていたのだろうか。