俺が人生で初めて彼女に振られた時、相手とは遠距離恋愛をしていた。
新幹線で2時間くらい離れた場所に住んでいたが、彼女はわざわざ俺のところまで来て「距離の問題もあるし別れたい」と言った。別れ話をするためだけに新幹線に乗ってやってきて、二人で話して、最後はお互い泣いて別れた。当時の俺にとって恋人との別れはそれくらいの一大イベントだった。

ところが一番最近の別れを思い出そうとすると、これがあまり覚えていない。俺はこれまで20人前後の女性と付き合ってきて、振ったことも振られたこともそれなりにある。が、最近になるほど別れが軽い。
LINE一発で「別れたい」と言われることもあれば、最悪LINEブロックで終了する。昔は振られればそれなりにダメージを受けていたのに、最近は俺自身も慣れてしまって「はいはい、終わりね」くらいになりつつある。
女性が「別れる」というカードを切るまでの速度は飛躍的に上がった。ネットの投稿を見ていても思う。少し嫌なことがあった、思っていた相手と違った、関係がしんどくなった。そこで二人で問題を解決するより先に「じゃあ別れよう」が出てくる。
恋愛は途中から課題解決ゲームになる
そもそも恋愛なんて最初は誰でも楽しい。
付き合いたてなら相手の欠点すらかわいく見えるし、週末に会うだけでイベントになる。でも半年、1年、2年と付き合えばそんなボーナスタイムは当然終わる。連絡頻度、仕事、金、住む場所、セックス、結婚観。長く付き合えば付き合うほど二人の間には何かしらの問題が出てくる。
だから俺は、長期的な恋愛って途中から課題解決ゲームになると思っている。問題のない相手を探すんじゃなくて、問題が起きた時に「何が原因なのか」「どこまでなら譲れるのか」「どうすれば二人とも納得できるのか」を考えて一個ずつ処理していく。この作業ができない限り、相手を何回交換したところでいずれ同じところで詰まる。
でも現代は、この面倒な課題解決をする前に関係を終了できてしまう。嫌なら辞めればいい、合わないなら次に行けばいいという選択肢が常に見えているからだ。しかも次の相手を探すハードルまで昔より遥かに低い。
人間関係までショート動画化している
これは恋愛に限った話でもないと思う。今のコンテンツは何でも短い。YouTube Shorts、TikTok、Instagram。数秒見て面白くなければ次へ行く。一冊の小説に何時間も付き合うより、短くて刺激の強いコンテンツを次々消費する方が圧倒的に楽だし、世の中そのものがそっちに最適化されている。
そんな生活を毎日しているのに、恋愛だけ「一人の人間と何年も腰を据えて向き合いましょう」になる方が不自然なのかもしれない。相手の嫌な部分が出てきても、しばらく我慢して、話し合って、自分も反省して、関係が良くなるまで待つ。これには時間もストレスもかかる。要するにショート動画とは真逆の娯楽だ。
しかも人間関係のストレスというのは、ある程度その環境に居続けないと慣れない。仕事でも部活でも最初はキツかったものが数ヶ月すると普通になることがあるけど、恋愛も似たところがある。少し関係が悪くなっただけですぐ逃げていたら、ストレスに慣れる前に毎回ゲームオーバーになる。
マッチングアプリが「次の男」を近くした
そして恋愛をさらにインスタント化したのがマッチングアプリだと思う。

男がアプリで彼女を作ろうとすると意外と大変だ。まずマッチしない。マッチしても返信が来ない。そこを突破してデートに誘って、店を予約して、場合によっては全額奢って、2回3回とデートしてようやく付き合える。男からすると結構な労力を払って手に入れた彼女だから、ちょっと喧嘩した程度で手放したくない。
一方で女性側は、少なくとも俺が見てきたマッチングアプリの世界では、男性より圧倒的に選択肢を持ちやすい。誘われてデートに行き、奢ってもらい、何度か会って告白されて付き合う。もちろん全女性がそうではないけど、こういう構造なら今の彼氏と問題が起きた時に「もう一回二人で頑張ろう」より「次の人に行こう」が頭に浮かびやすくなるのは不思議ではない。
昔なら恋人と別れれば、次に好きな人ができるまで半年、1年かかったかもしれない。今は別れた日の夜にアプリを開けば数百人の男が出てくる。別れるコストも低ければ、乗り換えるコストも低い。そりゃ一人の人間に執着する理由も減る。
「もっといい人」を探していたら結婚できない
俺は日本の未婚率が上がっている理由の一つも、ここにあるんじゃないかと思っている。結婚って結局、「世の中にはもっといい人がいるかもしれないけど、とりあえずこの人とやっていく」とどこかで腹を括る行為だからだ。
結婚相手にも絶対に嫌なところはある。喧嘩もするし、マンネリもする。その度に「もっと自分に合う人がいるはず」と相手を交換していたら終わらない。なぜなら次の人にも別の欠点があるから。
便利になったはずの現代で、恋愛まで便利になりすぎた。出会うのも簡単、別れるのも簡単、次を探すのも簡単。その結果、一人の相手と問題を抱えながら関係を作っていく能力だけが必要なくなりつつある。
最初に話した、わざわざ新幹線に乗って俺を振りに来た元彼女のことを今でも覚えているのは、あの別れにはそれだけの重さがあったからだと思う。二人とも最後まで関係に向き合った上で、それでも無理だったから別れた。
今は別れること自体が悪いと言いたいわけではない。どうしようもない相手ならさっさと別れた方がいい。
ただ、ちょっと面倒になっただけなのに「次に行けばいい」を繰り返していたら。誰とも長くは続かない。

