2016年10月某日
ナンパ師として6年ほど活動したある日。
僕は家のベットで横になりながら、趣味である旅行用のTwitterを見ていたTwitterは趣味に特化できるので面白い。
当時、僕は実名のアカウントと旅行用のアカウントの2つを所持していた。
旅行用のアカウントを見ながら、次のたびに思いを馳せる。九州でツーリングをしようか、いや、それともセブにでも行こうか。セブに行った方が女の子とのトークで幅を広げる事が出来るか。うん、次の旅行はセブにしよう。
そう思い、セブ系の画像をTwitterで漁る。時刻は夜の21時を回っていた。そろそろストナンにでも出るか…
そんな事を思っていると、一枚の画像が目に入った。
全裸の女性が、自分の手で乳頭をギリギリに隠す。その画像には「今夜、暇してるよ~」の文章が添えられていた。
ベットから跳ね上がる。
なんだこれは。
なんなんだ、この界隈は。
そのアカウントのツイートを漁る。
すると、男性のアカウントのRTを見つけた。
血走った目で、陰茎に手を添えながら彼のツイートも漁る。
彼は、毎日毎日、色々な女性と性行為をしている画像を上げていた。女の子からの感想の手紙もある。毎日オフパコ君かよ。
「嘘だろ…」
僕が死ぬ思いで、つま先から血を流しながらストナンをしている横で
この男は、Twitterのみで、狂ったように性行為をしているのか。
この界隈に、早く気が付けて良かった。僕はもう、こんな苦しい想いをしてストナンをする必要は無くなった。ナンパ師の引退か。6年もやったんだ、それも良い。
「今夜暇してる」の女子でDMを送ろうとし、手を止める。今の僕のアカウントは旅行用のアカウント。こんなアカウントから送られると、警戒されてしまうかもしれない。
よし、オフパコ用のアカウントを作ろう。
急いで捨てメールから、適当にアカウントを作る。
アイコンは拾ったこの画像でいいや
プロフは適当に誰かのパクっておこう
名前は…そうだな、今まで抱いた子の中で一番酷かった、あの子の名前を使おう
急ごしらえで作ったそのアカウントで「今夜暇している」の女子にメッセージを送る。返事を待つ間、彼女の画像を漁る。中々に良い恵体、抱き心地がよさそうだ。
しかし、10分待てど返事は無い。
そこで思いつく。ここはリスクヘッジの為、ほかの女子にもメッセージをしよう。
狂った淫獣のように、口から涎を垂れ流しながらパソコンを開く。
血走った目で、片っ端からメッセージを送る。200人程度にメッセージを送り終えたところで、一旦手を止める。
「ふぅ、、、ここまで送れば、20人からは返事が来るだろう、、、」
そんな事を考えながら、冷蔵庫からI.Wハーパーウィスキーを取り出し、ロックで割る。ここは大人の余裕が大切だ。部屋でジャズを流しながら、ソファに腰かけ、優雅に本を読む。今夜の性行為を想像する。
1時間が経過し、ワクワクしながらパソコンを開く。
メッセージ0件
おやおや、、、Wifiが壊れているようだ。
しかし「あああ」と入力したGoogleは、正確にトリブルエーの公式サイトを案内してくる。どうやら、壊れていたのは僕の頭のようだ。
僕がメッセージを送った女達は「今日はこの人と」と別の男とのやり取りを上げている。
さらに、毎日オフパコ君は新しい動画を上げていた。
「ああ、なるほど。」
ようやく理解できた。
オフパコ界隈なんてものは、存在しなかったのだ。
全部&全員捏造。全てのアカウントはどこかのフィリピンの業者が運営しており、またそこに上がっている画像も高度なAIで作られたものだ。
そこにDMしてくる男性を見るのが、彼らの愉しみ。場合によっては、一部の男性にアマゾンギフトでも要求しているのだろう。
失意と同時に、怒りが胸にこみあげる。
僕は、この怒りを鎮める方法を一つしか知らない。ストナンだ。
1ミリのシワも許さないスーツを羽織る。
磨き上げた靴を履く。
香水をくぐる。
ウィスキーを喉に流し込み、外に向かう。
その時
開かれたパソコンから、急ごしらえしたオフパコ用のアカウントが見えた。
こんなジャンルがあるのであれば、もしかしたらナンパ用のTwitterアカウントも多いのではないか。
今日のストナンが終わったら、少し調べてみよう。
そんな事を思いながら、街に向かう。
表示されているオフパコ用に作ったアカウント
今まで抱いた子の中で一番酷かった、あの子の名前。
ーーそれが、「のんちゃま」誕生の日となった。
2019年、某日
僕は新橋の某ネットカフェに居た。店内には煙草と陰気と湿気が入り混じった場末感がある。この底辺感が非常に心地よい。やはり僕の根底に流れているのは「陰湿なキャラ」のようだ。
あれから2年10カ月が経過した。ナンパ専用アカウントとして生まれ変わった「のんちゃま」のフォロワーは8,888人を超えた。
大会にも出場した。サロンやnote、ブログも作った。また、多くの仲間も出来た。遠く離れた信州の地でストナンをしているkyoやshuuususuke、閻魔、イナゴ。彼らはかけがえのない仲間だ。
そしてこの漫画喫茶で余暇を使い、ナンパの在り方を示す記事を書いていた。そんな最中、グループラインでkyoが発言をした
「いま、東京行きの新幹線乗ってる」
なんだと!?いまから?!
「え、まじ?東京くんの?」
反射的にそう返す。今日はストナン日和になりそうだ。しかし、事前に連絡してくれても良いのに。
「何時から何時?」
時間を確認する為にLineを送る。
「とんぼ返りだよ」
ん?どういうことだ?
「ああ、仕事?」
「追々ツイートするわ。今言うと面白くない。」
何のことだろうか。さては、、、こいつ、ノックでもするのか。さすがと言うべきか。kyoのストナンに対する熱心さには、いつも感心させられる。
手に取った、味の薄いデカビタで喉を潤しながら、僕は作業に戻った。
数時間後
そろそろ記事も書けた。これを公開して今日の作業を終えるか。
しかし、依然kyoからは何のアップデートも無い。一体何をしているのか。仕事であれば、何時からストナンはできるのであろうか。
そんなの事を考えながら、漫画でも読もうかと席を立つ。
「ベルセルク(狂戦士)」という漫画を手に取り、薄いデカビタでコップを満たし、席に戻る。
なんとなく、Twitterをチェックする。
すると、僕の目に信じられない文字が飛び込んでくる。
「・・・・え?」
静かにする事が義務付けられているネカフェの個室で、思わず声が漏れてしまう。
オフパコ・・・即?
いやいやwwまさか、ご冗談をww
どうやら作業のし過ぎで、僕は疲れすぎたらしい。
一度目を閉じ、深呼吸をする。
デカビタで喉を潤す。
・・・ふう。
笑顔で再度、スマホを開く。
「・・あああああああ↑↑ああああああああ↓↓ぁぁぁああああああ↑↑↑↑」
突如として自由空間新橋店、個室38番から流れ出る絶叫
周囲のざわつきを感じる。
そんな事はお構いなしに、すぐさまkyoにLineをする。
落ち着け、、、落ち着け、、、、
ゆっくりと深呼吸し、kyoへLineをする。
「は?許さんぞ?」
状況が理解しきれない。なぜだ、なぜこんな事になった。
頭の中に一瞬、200人にDMを送り誰からも返事の無かった2年前がフラッシュバックする。
悔しさと情けなさと怒りで、頭が沸騰しそうになるのを抑える。
すると、kyoから返事があった。
ゆっくりと、極めて冷静に、落ち着いてその返事に目を通す。
「フォロワ8,888人でオフパコ童貞ってマジ?」
僕の心は、臨界点を超えた。
「AAAAAAHHHHHH!!!!!!!!OOOOOhhhhhhhh!!!!!!」
狂犬の遠吠えが響き渡る。
「ころ〇てやる、、ころ〇てやる、、ころし〇やる、、こ〇してやる、、〇ろしてやる、、」
隣の個室のドアが開けられ、誰かが助けを求めに行く音が聞こえた。
しかし、そんな事はどうだっていい。
臨界点を超えた僕の心は、どのようにして信州勢を滅亡させるかを考えていた。
このクラスタ達を、血祭りにあげてやる
「は・・・あーっははははははははアアアババババババーー!!!!」
乾いた笑いが、陰湿な自由空間にこだまする
パソコンを開き、旅行予約サイトを開く。
「・・・・・・・・これより、刑を執り行う・・・・・・」
「個室38番の客がヤバい」
まったく、、、何のことだ。楽だという記載をみてネットカフェのバイトを始めてみたものの、ここに来る客はどれも底辺ばかり。
ハゲ散らかした頭と脂ぎった顔の、でっぷりと太った親父が喫煙室の異変を知らせに来る。
「そうですか。そのままお過ごし下さいませこのハゲ」と言うわけにもいかないので、とりあえず喫煙フロアへ階段を上がる。
すると
僕の耳に、狂った笑い声がとどく。
「アッキャッキャキャッキャキャキャ!!!!」
これは、ただ事ではない。何が起きているのか。
「アヒアヒアッヒー!アヒアヒアッヒーーーー!!!!」
震える足で、なんとか38番個室の前に辿り着く。
部屋の中から「邪気」と呼ぶべき陰湿なオーラが溢れ出している。
いけない。このままでは、中にいる人間は正気を保てない。
「お客様ーーー!!!!!!」
絶叫しながら、ドアを精一杯叩く。
返事は無い。
くそっ・・・・どうすれば・・・・
そんな事を思っていると、隣で様子を見ていたハゲ親父が意を決したように、扉に手を掛ける。
「親父!?」
「やるしか・・・ないだろ!!!」
お互いに目を合わせる。
たまにはこんな日も、あっていいだろう。
思いっきり扉を開ける。
煙のような邪気が溢れる。
邪気で中の様子は良く見えない。
そして、徐々にその煙が晴れる。
「こ、、、これは、、、、」
「暗黒卿・・・?」
暗黒卿は立ち上がり、なにかを呟きながら、9階の会計フロアに向かって去っていった。
立ち上げっぱなしになってるパソコンのモニタには、ホテルの予約サイトが表示されている。
彼は・・・いまなんといった?
確か・・・・
8月、信州を征服しに赴くと。
オフパコを絶対に許さない、地獄の果てまで追い詰める「のんちゃま」と、何度言われてもオフパコしちゃうウッカリ者のチンパンジー「kyoくん」の、繰り返される激戦の記録です。この戦いから、目を反らすな!
男は黙ってストナン